レポート Report

セット詰めきれずも、予選5位を確保

 昨年はポールポジション3回、優勝2回で最も速さを印象付ける成績を残しながらもチャンピオンを獲得出来なかった野尻智紀選手と伊沢拓也選手だが、今年こそは二人で力を合わせてチャンピオンを目指していく。

冬のテストでは、8号車は大きなトラブルもなく順調にテストメニューを消化して来たが、ライバル達の仕上がりも良さそうなので、より激しい戦いが見られそうなシーズンになりそうだ。

午前中のフリープラクティスでは、3月に行われたテストの結果を元にセットを進めていったが、微妙なコンディションの変化になかなかセットが決まらず5番手でセッションを終えた。

午前は肌寒いコンディションだったが、Q1が始まる頃には上着を脱ぎたくなるまで気温があがってきた。この変化がどの程度順位を変えるか興味深いところだ。

伊沢選手は今年最初のQ1に向けて集中力を高めていき車に乗り込んだ。車のバランスは悪くなさそうだが、他車のタイムが非常によくQ1突破が危ぶまれたが、伊沢選手は7番手で見事Q1を突破した。

Q2はプレッシャーがかかる中、野尻選手はゆっくりとコースイン。タイヤに熱を入れてタイムアタックが始まった。タイミングモニターでは序盤に上位に表示されるものの、徐々に他車がタイムアップし最終的には5位で予選を終えた。セットが決まらなかった中、チームとドライバーは表彰台を狙えるポジションで予選を終える事に成功した。明日は雨が降る予報なので、しっかりと準備をして開幕戦に挑みたい。


鈴木亜久里監督のコメント

「車のセットがなかなか決まらなかったけど、そんな中でチームもドライバーも良い仕事をしてくれたと思うね。
明日は雨が降るみたいだからチャンスはある。だけどまずは確実に走りきり、1点でも多くポイントを獲る事が重要だね」

星学文エンジニアのコメント

「朝のフリー走行は3月の公式テストのセットをアジャストしたもので走り出しました。それほど悪くはない感触が得られていましたが、タイヤとコンディションのマッチングに少し苦労しました。ちょっとしたコンディション変化でバランスが変わってしまうようなところがあったので悩みました。
Q1は伊沢選手に行ってもらいましたが、このときはコンディションが合っていたのか、バランスはそこそこ良かったです。Q2に向けてセットを少しアジャストしてみたのですが、やり過ぎてしまったせいかタイムが伸びませんでした。タイムが伸ばせなかった原因を探して明日の決勝に挑みたいです」

野尻智紀選手のコメント

「ちょっとだけミスがあったとは思いますが、ミスが無ければトップが獲れていたかというとそうでも無いので、まずまず車のポテンシャルを引き出して、タイムを出せたと思っています。
明日はコンディションが大きく変わると思いますので、車と自分の課題をクリアし、明日のレースを戦っていきたいと思います」

伊沢拓也選手のコメント

「ギリギリではありましたが何とかQ1を突破する事が出来たので、自分の仕事は出来たと思います。テストから速かったニッサン勢が今回も速かったので、レースは天候も含めて荒れそうなので、確実にポイントが獲れるようなレースをしていきたいです」

新コンビとマシンでポールポジション獲得

今年は高木真一選手の相棒として、ヨーロッパ帰りの福住仁嶺選手が務める事になった。福住選手は2015年にレースでの走行は無かったものの鈴鹿1,000kmレースのARTAの第3ドライバーとして登録され、事前のテストでは高木選手に匹敵するタイムを叩き出していた。また、カート時代は数々のチャンピオンを獲得し、ヨーロッパでもその才能を見せつけた。

今年は車両もNSX GT3に変更。チームは心機一転して新シーズンを迎えた。シェイクダウンは3月の鈴鹿。GT3車両はシェイクダウンでトラブルが出る事がよくあるが、この車は完成度が高いせいか、車両トラブルはなく、順調にテストメニューを消化する事が出来た。

そしていよいよ迎えた開幕戦。フリープラクティスから車は非常に安定しており、ライバル達も非常に速かったが3番手でセッションを終える事が出来た。

Q1は高木選手。今年からQ1のノックアウト予選は台数が増えたため、2組に分かれる事になった。開幕戦の組分けは昨年のシリーズランキング順で、ARTAは2位だったので2組目の予選となった。各組、上位8台がQ2へ進出出来る。高木選手は危なげない走行で、見事1位でQ1を突破し、福住選手につないだ。

福住選手は初めてのツーリングカーの予選で非常に緊張していたが、それを感じさせない走りを披露し、見事ポールポジションを獲得してみせた。


土屋圭市アドバイザーのコメント

「真一はいつも凄いけど、仁嶺は初めてにも関わらず見事な仕事をしてくれたね。嬉しいね。明日は天候が変わるから気を引き締めてレースを戦っていきたいね。頑張ります」

一瀬俊浩エンジニアのコメント

「富士と岡山のテストで車両特性を確認してきました。まだいくつか問題は抱えているのですが、テストのデータを上手く反映する事が出来ました。
Q1は高木さんが行ってくれましたが、仁嶺とのドライビングの違いも理解してくれていたので、どういうようにセットを変えたら仁嶺がタイムを出せるかもレクチャーしてくれました。明日は、今日の走行データを見直して準備をしてきたいです」

高木真一選手のコメント

「人が獲ってくれたポールを久しぶりに喜べる感じがしました。それは開幕戦というのもあるし、車も新しいし、コンビも新しいので、昔、新田さんと良い成績を残した時のような印象が蘇ってきました。
開幕戦は今まで表彰台に乗れるような良い成績を残した記憶が少ないのですが、今年は表彰台に乗れそうなポジションにいるので、まずは少ない時間で車を仕上げてくれたチームに感謝したいです。良いポジションでゴールに導きたいです」

福住仁嶺選手のコメント

「今回Q2を担当させていただきました。フリー走行から感触も良かったのですが、ニュータイヤを履いた時の動きがどうなるか把握しきれてなかったのですが、高木さんがQ1で良いタイムを出していましたし、Q2は路面もより良くなっているので、ミスをしないようにうまくまとめて走るように心がけ、何とかトップで戻ってくる事が出来ました。
GTというカテゴリーは長いレースですし、完走する事がとても大切だと思っているので、まずは色々な事を沢山吸収して、次につなげられるように走りたいと思っています。もちろんこのポジションなので、当然優勝は目指しますが、確実に走り切る事が大切だと思っています」

悪天候でレース中止、他車のペナルティで開幕戦優勝

レースは天気予報通り、午後から雨が降り始めた。ウォームアップ走行では、完全なウェットコンディションで、決勝へ向けたセットの確認を行った。

雨はより一層強くなり、セーフティーカーが導入されてのスタートとなった。伊沢は慎重にタイヤに熱を入れながらスタートを待った。セーフティーカーランを3周行った後にスタートは切られた。500クラスは無事にスタートを切ったが、300クラスの後方でクラッシュがあり、すぐにセーフティーカーが導入された。

車両回収までに5周を要し、再スタートを切った。伊沢は雨量が多かったものの、ペースはよく、前車をいつでも抜ける状態だった。間合いを詰めて、12周目に12号車を抜き、4番手に浮上。しかし、この直後にモスエスでまたもや300クラスがクラッシュし、赤旗中断となった。

約45分後にセーフティーカーが入り、5周後に再スタートが切られたが、相変わらず雨量は多く危険なコンディションだったが、伊沢は何とか23号車を抜き去り3番手に浮上。伊沢は無線で雨量が多いので危険を訴えながらの走行を続けた。

そうしているうちにトップ争いをしていた1号車がコースアウト。2番手に浮上したところでまたもやモスエスで300クラスがクラッシュしてしまい、セーフティーカーが導入されたが、主催者側が危険と判断し、31周経過後に赤旗でレース中止となった。レース後にトップの車にペナルティが課されて、#8 ARTA NSX-GTが1位に繰り上がり、開幕戦で優勝を飾る事になった。


鈴木亜久里監督のコメント

「お客さんにはとても申し訳ないと思っていますが、天候だけはどうにもならないですし、ドライバーの事を考えるとこのレースの中断は良かったと思っています。
しかし、このコンディションでコースに留まる事自体が大変なのに、ドライバーは本当によく頑張ってくれたと思います」

星学文エンジニアのコメント

「ウォームアップでは雨のセット確認を行いましたが、バランスは悪くなさそうなので、順位をあげられる事を期待していました。しかし、予想以上に雨量が多かったので、レースを続ける事が不安でしたが、伊沢選手は何とかコースにとどまり、レースが終了するまで無事に走らせてくれました。
結果、優勝は非常に嬉しいですが、まだまだ課題もあるので、改善して次のレースに挑みたいです」

野尻智紀選手のコメント

「結果として私が走る機会はありませんでしたが、伊沢さんが熱い走りをしてくれて予選の結果よりよいポジションで戻ってきてくれたので感謝しています。チームも良い車を用意してくれたのも良かったです」

伊沢拓也選手のコメント

「コース上に留まるのも難しい中、何とかニッサンの2台を抜く事が出来ました。前を走っていたホンダ2台がいなくなって、結果的に優勝出来たのは複雑な気持ちですが、そういう位置にいられた事が大きいと思うので、良かったと思います」

雨でのデータが無い中でも検討して2位を確保

決勝前のウォームアップ走行では雨が降り始め、ウェットコンディションによる走行となった。天気予報では降水確率が高く、レースが終わるまで雨は止みそうにない。

雨足が強いままスタートを迎えた。セーフティーカーが導入されスタートを切ったが、雨が初めてのARTA NSX GT3は雨のセッティングデータがなく、高木真一選手は難しいドライビングを強いられた。

2番手の新田選手はペースもよく、今にも抜かれそうだったが、スタート直後の1コーナーで300クラスの車両がコースアウト。すぐにセーフティーカーが導入され、5周後に再スタートが切られた。フロントシップよりもタイヤが暖まりにくいミッドシップのNSXはフロントタイヤの熱を入れるのに時間がかかり、再スタート後の11周目に抜かれてしまう。その直後に300クラスの多重クラッシュがあり、赤旗中断となった。

約45分の中断後、セーフティーカー先導でスタートが切られた。雨足は弱まる事もなくレースは続いたが、23周目にモスエスでまたもやクラッシュが起こり、セーフティーカーが導入された。主催者側が危険と判断し、30周でレースは終わり、#55 ARTA NSX GT3は2位で初戦を終えた。


土屋圭市アドバイザーのコメント

「まずはお客さんにきちんとレースをお見せ出来なかった事が残念ですし、申し訳ない気持ちです。しかし、ドライバーの安全を考えると、これ以上レースを続けるのは危険なので、ご理解いただきたい。
真一は雨のデータもなく、この悪コンディションの中、予想外のペースで周回してくれたのは大収穫だね」

一瀬俊浩エンジニアのコメント

「雨のデータが無かったのと、良いと思っていたタイヤがこのコンディションと合って無かったのでウォームアップではあまり良い感触ではありませんでした。
レースに向けてセットを変更したのでペースは良さそうでしたが、タイヤの暖まりがあまり良く無かったので、順位を下げてしまいました。最大限のポイントを開幕戦で獲れたので良かったです」

高木真一選手のコメント

「雨のデータがほぼゼロだったので、そういう事を考えると、新田さんについていけたのはチームが頑張ってくれたおかげだと思います。ただ、フロントにエンジンが無いので、フロントタイヤの暖まりが悪かったのですが、初めての車でここまでの順位に持ってくる事が出来たのは上出来だと思います。
新田さんに最多勝を持っていかれてしまったので追いつけるように頑張ります」

福住仁嶺選手のコメント

「今回、私自身走る事は無かったのですが、雨でもポテンシャルのある車である事がわかっただけでも大きいですし、ニューマシンで走行が殆ど無い中で、このような結果を残せたのは良かったと思っています。また課題も見えてきたので次も良い結果を残せるように頑張ります」