レポート Report

午前の絶不調からの予選3位で明日に希望

昨年のこの鈴鹿で#8 ARTA NSX-GTはポールポジションから優勝を遂げた。今年も昨年のような優勝を再現したいが、午前のセッションは不調で順位は13位に終わった。タイムが伸び悩み、セッティングを変更しても車の症状はなかなか変わらなかった。

しかし、午後の予選へ向けてチームは思い切って大きくセッティングの変更を行った。今年初めてQ1を担当する事になった野尻智紀は、残り8分を切ったところでコースイン。前後の間合いを取りながらタイヤを暖めてからアタックに入っていった。野尻は各区間タイムを確実に縮めて、午前の順位からは想像も出来ないトップタイムを叩き出してQ2の伊沢拓也につないだ。

伊沢は残り7分でコースイン。ゆっくりタイヤを暖め、残り4分でアタック開始。この1周に賭けていた伊沢は大きなプレッシャーがかかっていたが、高い集中力で1周を走りきり3番手という好位置で予選を終えた。

充分に表彰台を狙えるポジションなので、明日は3位以上でチェッカーを受けたい。


鈴木亜久里監督のコメント

「いや〜、午前のセッションが絶不調だったから、この結果は嬉しいね。チームとドライバーにはここまでポジションを上げてきてくれて感謝だね。しかし、明日もあるので、準備してしっかり戦って結果を出したいね」

星学文エンジニアのコメント

「午前のホンダ勢は下位に沈んでしまい、ポジションを上げるのは難しいと感じていました。予選はコンディションの変化もありましたが、車のセットを大きく変更しましたので、それが上手く機能したと思います。明日もこの気温でのレースになるので、また今日とは違う考え方で行かないといけないので、上位でフィニッシュ出来るように頑張ります」

野尻智紀選手のコメント

「午前のセッションは最近では覚えが無いぐらい不調で、予選に向けてセットアップを変更しましたが、どうなるか不安でした。しかし、Q1が始まってピットアウトした瞬間から午前中とは違うグリップ感があったので、ボクとしては手応えのある感触で走ることができてトップタイムというのは、午前の不調と車のポテンシャルを引き出せなかった事を考えると自信につながりました。Q2の伊沢選手も良いタイムを出して戻ってきてくれたので、更に車のポテンシャルを引き出して明日良い結果を出せるように頑張ります」

伊沢拓也選手のコメント

「Q1で野尻選手がトップでつないでくれて3番手というのは個人的には悔しい思いもありますが、午前の状況から考えるとタイム差も少ないですし、ここまで車の状態をよくしてくれたチームに感謝したい気持ちです。またホンダ勢の中でもトップに立てた事はポジティブに考えられる要素だと思います。明日は確実に表彰台争いを出来ると思うので、頑張りたいと思います」

47kgのハンディの中で最大限のポテンシャル引き出し9位

現在、ポイントリーダーの#55 ARTA NSX GT3だが、ハンディキャップウェイトが47kgなので苦戦を強いられる事は予想されていたが、午前のセッションは16番手と下位に沈んでしまった。16番手はQ1を通過出来るギリギリのポジションだが、もう少しタイムを出しておかないとQ1は難しい状況だ。

チームはQ1に向けて車のセットを変更し、福住仁嶺に託した。福住はタイヤを暖めながらタイムアタックに入ったが、1回目のタイムアタックでは11番手で、一度クールダウンしてから再度アタックする事になった。しかし、ここで他車のコースアウトがあり赤旗中断となってしまう。福住はもう少しタイムを縮める事が出来ると感じていたのと、他の車はこの赤旗でタイヤを使い切ってしまった事が考えられるので、更にポジションを上げる可能性が出てきた。福住はタイムアップに成功し、順位は落としたものの13番手でQ1を通過した。

ここで福住は車の状態をチームに伝え、Q2の高木真一が乗るまでにセットを変更した。高木は見事に順位を上げ9番手で予選を終えた。今回は福住のコメントが予選のポジションアップに貢献した。

明日はポイントを少しでも多く獲得出来るようにレースを戦いたい。


土屋圭市アドバイザーのコメント

「この重さで良く頑張ってくれたね。決勝を見据えたセットは良さそうだから、明日はひとつずつ確実に順位を上げてポイントを少しでも多く獲得したいね」

一瀬俊浩エンジニアのコメント

「車のセッティングはオフシーズンのテストと第1戦、2戦のデータを加味して持ち込みました。柔らかさと硬さと相反する車を仕上げ両立させようと思っていました。効果はあったと思うのですが、それ以上にハンディキャップウェイトの重さがキツかったです。バランスは良かったのですが、タイムが出ない事が問題なので、予選で1発のタイムが出るようにアジャストしました。赤旗に助けられたというのもありますが、Q1はギリギリ通って、Q2に向けて仁嶺のコメントからセットを微調整したらバランスが更に向上して順位を上げる事が出来ました。現状では車のポテンシャルを引き出せたのかなと思います。また決勝へ向けたセットを進めていたので、予選より決勝がよくなると思っています」

高木真一選手のコメント

「3月に鈴鹿でシェイクダウンしましたが、その時はパーツも無かったですし、セッティングを出来る状況では無かったので、実質今回が初走行みたいなものでした。また、3月のデータも全く役に立たなかったというのもありますが、午前のタイムアタックではタイミングが悪かったというのもあって順位は良くなかったです。でも決勝を見据えてユーズドでのセットアップも仁嶺と一緒にセッティングを進めて手応えがあったので、予選が悪かったとしても決勝で粘り強いレースをしたいと話をしていました。しかし、予選までにチームも頑張ってくれましたし、仁嶺のフィードバックも的確で確実に車がよくなっていったので、47kgというウェイトを積んでいる中では最大限のポテンシャルを引き出せたと思っています。明日の決勝の方がボク達は自信を持っているので、良い結果を出せるように頑張ります」

福住仁嶺選手のコメント

「今回はQ1を担当する事になったのですが、午前のセッションではオーバーステアが強かったのでその症状を抑えるセットをして予選に挑みました。バランスだけでいうとだいぶ改善されましたが、旋回中の不安定さは少し残っていました。何とか13番手で通過する事が出来ましたけど、それは赤旗の影響もあったからだと思います。ボクが感じた車のフィーリングをチームに伝えて、高木さんが乗る前までにアジャストしてもらって、結果9番スタートという事になりました。ボクも何とかQ1を通過出来て良かったですし、高木さんが順位を上げてくれてよかったです。明日は少しでも多くポイントを獲得出来るように頑張りたいです」

表彰台は逃すも上出来の結果

5月とは思えないほど気温は上昇し、30℃を超える中、スタートを迎える事になった。スタートドライバーは伊沢拓也だ。

伊沢は4番手の車を牽制しながら、1コーナーへ入っていった。3番手をキープしながら周回を重ねていく。車のバランスは良さそうだ。6周目から300クラスの周回遅れが出始め、伊沢は混乱に巻き込まれ2つ順位を落としてしまう。しかし、集団から出た伊沢のペースは良く前車とのギャップを詰めていく。

17周目の130Rで他車がコースアウト。スポンジバリアに突き刺さり、ここでセーフティーカーが導入される。車両の回収が済み、22周目にリスタートが切られ、他車は次々とルーティンのピットインが始まった。

伊沢は翌周にピットインし、野尻智紀に交代した。野尻は7番手でコースに復帰。翌周には元の5番手にポジション復帰。トップグループより速いラップで野尻は周回を重ねる。

ここで他車にペナルティが課せられ、4番手に浮上。300クラスの周回遅れにも助けられ、野尻はトップグループでレースを展開していく。上位4台はほぼ同じラップタイムで周回を重ね、膠着状態が続く。しかし、このまま52周を走りきり、4位でチェッカーを受けた。


鈴木亜久里監督のコメント

「上出来だったね。昨日の午前中の状態からやウェイトの重さとかを考慮すると最大限出来る事を発揮出来たんじゃないかな。まだ改善しなければならない部分もあるけど、今回はチームもドライバーも良いパフォーマンスを見せてくれたと思います」

星学文エンジニアのコメント

「昨日の予選から車のバランスがよくなってきたので、ウォームアップでは不満なところを解決しようという事でセットのアジャストを行いました。路面温度は想定していたよりも低かったので、タイヤも合っていたと思います。単独で走れる時は非常にペースも良く、後半のスティントは軽いレクサスに付いて行く事も出来たので、そう考えると良いパフォーマンスを発揮出来たと思います。暑い時期に重たい状態で4位を獲れたのは良かったです。次のタイにもつながると思います」

野尻智紀選手のコメント

「伊沢選手から良いかたちで受け継げて、作戦的にもSC直後1周あけてからピットインしたのがよく機能してくれたと思います。内圧の調整も上手くいき、レクサス勢と変わらぬペースだったと思いますが、トラフィックでの空力が抜けてしまうなど、いくつかウイークポイントが見つかったので、それを改善して次につなげたいです」

伊沢拓也選手のコメント

「全体的に荒れたレースでレクサスが残った中でボク達が唯一ホンダを含めて良い位置でフィニッシュ出来たのは収穫だったと思います。チャンピオンシップを考えるとここでポイントを獲るのは重要だと思っていたので、それが出来て良かったと思います」

重いマシンで6位、貴重なポイントを獲得

スタートを担当する福住仁嶺は、レース前のウォームアップ走行で決勝のセット確認を行い、スタートを待った。決勝のセットは良さそうだ。

福住はクリーンなスタートでポジションをキープしていたが、1周目のデグナーでひとつ順位を落としてしまう。しかし、2周目の1コーナーで挽回し、序盤から激しいレースが展開された。

タイヤが暖まり始めた3周目からはラップタイムも安定してきた。前車との差が開いていたが、福住は徐々にその差を詰めていく。しかし、気温が高いせいか、10周を過ぎたあたりから徐々にブレーキの効き目が悪くなってくるが、エンジニアからはブレーキを冷やしながらの走行を続けるよう指示を受け、我慢の走行を続けた。

予想以上に気温の高さとウェイトの重さが影響しているようだ。しかし、そのような困難な状況でも13周目のシケインの入り口で福住は前車を抜き、ポジションをひとつ上げ8番手に浮上。更に前車との差を詰めていく。

16周目に差し掛かったところで500クラスの車両が130Rでクラッシュ。セーフティーカーが導入される。ブレーキが厳しかった福住はここでクールダウンさせる事が出来た。

21周目にリスタートが切られ、他車は続々とピットイン。福住は暫定で3番手にポジションアップ。しかし、徐々にトラフィックが激しくなり始め、作戦を変更し早めのピットインを行う事になった。

26周目に高木真一に交代。12番手でコースに復帰。しかし、ここで問題が発生。高木が車に乗り込んだ時にホースが上手く入らず、高木はクールスーツを着用しているものの、効かない状態で走行していたのだ。

31周目には10番手までポジションを回復するも、タイヤ無交換作戦を取っているチームが多く、4輪交換を行った高木は苦戦していた。しかし、タイヤ無交換の車両は終盤にタイヤがきつくなってくるので高木は辛抱強くチャンスが巡ってくるのを待った。

高木は6番手グループに追いつき、39周目に8番手に浮上。更に前車のピットインで41周目に7番手、47周目には逆バンクで前車を抜き、6番手までポジションアップ。

最終ラップのシケインで2番手を走行していた車両がコースオフして抜けそうだったが、ギリギリで抜くことが出来ず、6位でフィニッシュ。ウェイトが重いうえにクールスーツが効かず苦戦したが、貴重なポイントを獲得した。


土屋圭市アドバイザーのコメント

「47kgのウェイトで登り坂のきつい鈴鹿で良く頑張った。上出来。真一にはクールスーツが効かなくて申し訳無かったけど、タイでは今回起こった課題を改善して挑みたいね」

一瀬俊浩エンジニアのコメント

「昨日のサーキットサファリで決勝のセットを進めていたので、そのデータを元にウォームアップでアジャストしました。悪かったところは改善出来たのですが、路面温度が変わってしまったので、それに合わせてレースに挑みました。単独で走ればパフォーマンスは高かったと思いますが、トラフィックで走るとペースを上げられませんでした。単独で走れるシチュエーションが少なかったので、予定していた戦略が上手く行かず、コース上でのバトルとなってしまいました。しかし、ドライバーが頑張ってくれて、ウェイトが多い中でもポイントを獲得する事が出来ました。シリーズを考えるとダメージを最小限に抑えられたと思います」

高木真一選手のコメント

「車はアウトラップで結構抜かれちゃったんですが、燃料が軽くなってからバランスが向上してペースも上がってきました。ペースが良かったのでもうちょっと早い段階で各車を抜くことが出来ていればもっと良い順位でフィニッシュ出来たと思います。やはり予選順位が悔やまれますが、次のレースにつなげていきたいと思います」

福住仁嶺選手のコメント

「スタートを担当しましたが、タイヤの暖まりはとても良くて最初から攻める事が出来たのですが、ソフトタイヤを履いている車に序盤抜かれてしまいました。途中ブレーキの具合が悪くなったので、ペースを上げられませんでしたが、無線でブレーキを冷やすように言われ、症状が回復してきました。そこからまたペースを上げる事が出来てポジションを回復出来ました。途中SCが入ったりしましたが、そのまま走っていると500クラスの混雑に巻き込まれるので早めのピットインをしました。高木さんはクールスーツが効かなかったのに、速いペースで走ってくれて、ウェイトが多い中で良い順位でフィニッシュする事が出来ました」