レポート Report

難しいコンディションの中、伊沢が絶妙なコントロールで予選2位

21年目を迎える今年のARTAは長年親しんできたロゴをリニューアルし、また「レーシングスポーツブランド」として生まれ変わった。その変貌はサーキットのイベントスペースにあるARTAのブースで見る事が出来る。現地に来ているファンの方々には是非ブースまでお越し頂きたい。また、ARTAのブランドサイト(https://artaracing.com/)も新たにオープンしている。

今年のチーム体制は既に発表しているとおり、野尻智紀と伊沢拓也の組み合わせだ。伊沢は2009年にARTAに在籍しており、9年ぶりの復帰。その年は2勝を挙げ、ランキング2位を記録している。最終戦での優勝は背後に迫るチャンピオンドライバーを抑えての勝利で、今でも記憶に残る素晴らしいレースだった。現在最も注目されている野尻とのコンビネーションは期待せずにはいられない。

さて、午前のフリー走行は、持ち込みのセット確認から始まった。予選へ向けてセットアップを進めていったが、天候が安定しない中、不安を抱えたまま予選を迎えた。

今年最初のQ1は野尻だ。野尻は低い気温の中、タイヤを暖めながら徐々にタイムアップしていった。難しいコンディションの中、野尻はQ1突破ギリギリの8位で伊沢にバトンをつないだ。

Q2が始まるまでに路面は完全なウェットコンディション。雨は強くなっていたが、伊沢はこのようなコンディション変化でも集中力を切らさずアタックに入っていった。各車タイムアップに苦しむ中、伊沢は見事なコントロールで、自己ベストを更新していった。他車も徐々にタイムアップしていたが、気迫ある走りで見事2番手のタイムを記録し、初戦をフロントローからスタートする事になった。


鈴木亜久里監督のコメント

「ハラハラした予選だったね。岡山に来るまで不安ばかりでどうしようと思っていたけど、チームとドライバーが見事な仕事をしてくれたね。野尻も伊沢も難しいコンディションで車をコントロールしてくれて、特に伊沢は気温が低いあの雨の中で凄いドライビングをしてくれたね。しかし、重要なのは明日のレース。優勝を狙えるポジションなので当然優勝を狙っていくから期待していて下さい」

星学文エンジニアのコメント

「シーズンオフのテストから公式テストまで積み重ねてきた事を見直して持ち込みのセッティングを決めましたが、午前のセッションでは天候が不安定でセットの評価が出来ませんでした。しかしながら、ベースのセットとしては良くなっている手応えがあります。迎えた予選はドライバーが頑張ってくれて、Q1はギリギリで通過出来ました。Q2はタイヤの選択が難しかったのですが、結果を見ると間違っていなかったのかな?と思います。悪いコンディションの中、伊沢が上手くコントロールしてくれてフロントローを獲得出来たのは非常に良かったです。明日は昨年の雪辱を果たしたいと思います」

野尻智紀選手のコメント

「開幕前は決して順調ではありませんでしたが、今日の走り出しから色々なセットを試していたら、良い部分も見えてきました。しかし、コンディションが安定しなかったので、ボク自身のドライビングやセットアップが上手く合わせきれているかどうか不安な部分もありました。午前のセットの方向性が間違って無かった事が確認出来、何とかQ1を突破出来ました。Q2は伊沢さんが素晴らしい走りをしてくれたので、フロントローという好位置でスタートを切る事が出来ます。明日は全てを出し切って良い結果に繋げたいと思います」

伊沢拓也選手のコメント

「ウインターテストから順調だったとは言えない状態で開幕前を迎えたので沢山不安がありました。そんな中、野尻選手がQ1を突破してつないでくれて、Q2で良いポジションを得られたのはチームの頑張りが表れたのだと思います。そしてボク自身が移籍して最初のレースは非常に重要な事だと考えていたので、この予選までは良いカタチに出来て良かったと思っています。明日は初戦を良い結果で締めくくれるよう集中していきます」

ギリギリでショーンがQ1を突破、Q2での急な雨にセット間に合わずも高木が8位

今年は昨年の体制を維持し、高木真一とショーン・ウォーキンショーで2年目に挑む。開幕前の富士の公式テストではトップタイムも記録し、車の仕上がりは順調だ。しかし、ここ岡山ではまだ表彰台に乗った事が無いので、初戦で結果を残しチャンピオンシップを有利に進めたい。

 午前のセッションでは3番手のタイムをマークした。3月に行われた岡山と富士の公式テストのデータを見て、持ち込みのセットアップを決めたが、そのセットが良い方向性である事が証明出来た。しかし、更に改善の余地が見えたのでセット変更を試みたが、雨が降ってきてしまい最終セットの確認が出来ずにフリー走行を迎えた。

Q1はドライコンディションだったので、フリー走行のセットでショーンに予選を託した。午前のフリー走行と比べ路面温度の変化もありセッティングが合っていない中で、ショーンはタイヤを上手くウォームアップ出来ずにいた。また、タイムアタックの周回に他車に引っかかってしまい、なかなかタイムが出せなかったが、セッション終盤にQ1突破ギリギリのタイムを出す事に成功した。

Q2は高木がコースインする直前に雨が降り始めた。チームはウェットのセットに変更したが、残り時間が少なかった為、完全なセット変更が出来ずに高木をコースに送り出した。高木はコントロールに苦しんでいたが、何とか8番手のタイムを出す事に成功した。

明日のレースは徐々にポジションを上げていき、表彰台を獲得したい。


土屋圭市アドバイザーのコメント

「岡山はいつも相性が良くないんだけどね。今日の予選は上出来じゃないかな。この手応えだと表彰台に手が届くところまで行けるかもね。綿密に作戦を練って、表彰台をゲットしたいね」

安藤博之エンジニアのコメント

「岡山と富士の公式テストから持ち込みのセットを変更しました。フリー走行では3番手のタイムが出たので、悪くないとは思いますが、予選へ向けてセット変更して徐々に改善が見られたのですが、雨が降ってき最終のセット確認出来なかったので少々不安が残りました。Q1は路面温度がかなり低くなってしまい、車を上手く合わせ込む事が出来ませんでしたが、ショーンが頑張ってくれて何とかギリギリクリア出来ました。Q2が始まる前に雨が降ってきてしまい、ウェットのセットに変更したのですが、完全にセット変更が出来ていなかったので、8番手というポジションになってしまいました。昨年は後方からレースで追い上げる事が出来たので、明日のレースセットを見直して挑みたいです」

高木真一選手のコメント

「急に降った雨だったので、ちょっとしかセット変更が出来ず、ほぼドライセットのまま走りました。アンダーステアがきつくて、コントロールするのが非常に難しかったですね。明日の決勝のコンディションを考えて今からセットを決めていきたいですね」

ショーン・ウォーキンショー選手のコメント

「タイヤのウォームアップが難しかったですね。Q1を突破する事が出来て、高木さんも急なウェットコンディションの中、素晴らしい仕事をしてくれたので、難しい状況でしたが何とか予選をうまく戦えたと思っています。明日はドライでもウェットでも良いレースペースを保てると思うので、頑張ります」

タイヤ無交換でグリップ厳しくも、集めたデータを次戦に活かす

決勝日の午前中は気温が低く、みぞれ混じりの雨が降るなど4月とは思えない気候でレースのコンディションが心配された。しかし、オープニングセレモニーが始まる頃には徐々に天候は回復し、スタート前までには完全な晴天となった。

気温の変化によって車のセットやタイヤとのマッチングは大きく変わってくるので、チームは決勝へ向けた対策をいくつか考えていた。

スタートは野尻智紀。上手くスタートを切れたものの、1コーナーで前車のブレーキが異常に早く、野尻はここで減速してしまう。すぐにリカバリーしようとしたが、後方の車両に飲みこまれてしまったのと、タイヤが予想以上に暖まらなかったので、1周目は10番手でストレートに戻ってきた。

その後の野尻はペースも良く周回を重ねていたが、なかなか順位を上げられずにいた。チームはここでタイヤ無交換の戦略を選択する事にした。他車のルーティンのピットインもあり、39周目までに5番手までポジションアップしていたところで伊沢拓也に交代。

伊沢は給油のみでピットアウトして、6番手でコースに復帰。47周目には5番手までポジションを上げた。作戦は成功したかに見えたが、70周を過ぎたあたりから徐々にグリップをキープするのが難しくなってきた。伊沢は何とかコントロールしてラップタイムの落ち具合を最小限に抑えて周回を重ねたが、残り3周で順位を落としてしまい、11番手でレースを終えた。ポイントを獲得する事は出来なかったが、多くのデータを集める事が出来たので、次回のレースに生かしたい。


鈴木亜久里監督のコメント

「スタートの出遅れがキツかったね。何とか挽回しようと思ったけど、最後までタイヤを持たせる事が出来なかった。色々なデータを取る事が出来たけど、このレースの結果を次に生かしたいね」

星学文エンジニアのコメント

「事前にいくつかの戦略を考えてレースに挑みました。しかし、気温が低くて思うようにタイヤが暖まらず、順位を大きく落としてしまいました。前半のレースラップは悪く無かったのですが、順位を落としてしまったのでタイヤ無交換の作戦をチョイスしました。終盤はグリップをキープする事が出来ず、ペースが落ちてしまったので、今回のレースを分析して次回のレースに生かしたいと思います」

野尻智紀選手のコメント

「スタートで前の車のブレーキが早すぎたので、そこで失速してしまいました。そのまま後方の車の集団に飲み込まれてしまい、順位を大きく落としてしまいました。今年のテストではロングランの状態が良かったので、タイヤ無交換も視野に入れていたのでチャンスはあると考えて走っていました。結果的にタイヤ無交換をさせてしまったのでその辺は反省していますが、車自体は良くなっていく伸びしろがあるので、次回以降のレースまでに立て直したいです」

伊沢拓也選手のコメント

「自分のスティントはタイヤ無交換でいって、終盤までまずまずのペースで走れていたのですが、終盤タイヤ的に厳しい部分があったので、このような結果になってしまいました。非常に悔しいので、次回は何とか良い結果を出せるように準備したいと思います」

前輪のみの交換で最後まで戦い切り6位を確保

午前は気温が低かったり、雨が降るなど天候が安定しなかったが、午後には日差しもあり、ウォームアップ走行までには完全な晴天となった。決勝前のウォームアップランではドライのセット確認を行い、手応えを掴みながらスタートを待った。

スタートは高木真一。1周目はポジションをひとつ上げ、2周目はさらに1つポジションを上げて戻ってきた。ドライセットの感触は良さそうだ。10周を過ぎた辺りから500クラスの車のラップダウンになり始め、混戦の中、順位を落としてしまう場面もあったが、高木はすぐにリカバリーして順位を5番手まで上げる。その後、他車のルーティンのピットインもあり、45周目のドライバー交代のときにはトップに立っていた。

高木のレース中のコメントにより2輪交換で後半を戦えるという事から、チームは前輪のみ交換してショーンを送り出す戦略を取る事にした。ショーンは7番手でコースに復帰し周回を重ねた。54周目には6番手まで順位をあげ、更にペースを上げて前車を追った。ペースは良く前車に追いついたものの、徐々にコントロールが難しくなってきた車で前車を抜くのは難しく、6位でポイントゲット。幸先よいスタートを切る事が出来た。


土屋圭市アドバイザーのコメント

「今日は4-6位くらいが我々が狙えるポジションだと思っていたので、予想通りの結果を得られて良かったと思う。もちろんもう少し上のポジションなら良かったけど、今日のタイヤの状態を考えると上出来だね。でも次は得意の富士なのでもっと良い結果にしたいね」

安藤博之エンジニアのコメント

「昨日試したドライのセットアップを基準にレースへ向けてアジャストしたところ、ペースも良く走る事が出来ました。タイヤライフ的には厳しいところもありましたが、他のチームの順位やペースを見ながら、2輪交換にする事を決めました。ピット作業にミスは無かったものの、少々時間がかかってしまい順位を落としましたが、他のチームも作業に時間がかかっていたので、ダメージは少なかったです。後半はコントロールするのが難しかったと思いますが、ショーンはパフォーマンスを落とすことなく走りきってくれました。今後に向けて良いデータが取れたのと、戦略の幅を広げる事が出来ると思います」

高木真一選手のコメント

「8番手からのスタートでしたが、あの位置は強敵が沢山いたので、今年は落ち着いてクラッシュしないように走る事を心がけました。しかし、この混戦だったので、リスクを負わなければならないと思いましたが、何とか安全に抜いてレースを展開していく事が出来ました。結果を出すにはタイヤ無交換作戦も視野に入れていましたが、これだけ混戦だったので、タイヤをちょっと酷使してしまった部分もあり2輪交換にしました。ショーンも終盤キツかったと思うけど、最後まで上手くタイヤを持たせてくれました。目標は4-6位くらいだったので、何とか目標の結果を出せて良かったです」

ショーン・ウォーキンショー選手のコメント

「タイヤライフを見ると勝つのは難しかったけど、レースラップは非常に良かったし、今回ボク達のパフォーマンスを出し切れたのではないかと思っています。次の富士に向けて良いレースが出来たと思います」